(またSFの話してる)
「あれってさ、超えてる部分はとっくに超えてるっしょとは思うけどね。もともと計算はコンピュータの方が速いし、複雑なことができるようになってきてるし、学習スピードも速いしでさ」
(意思を持ったらどうなるかって話が多いよね)
「それも、どうなったら意思を持ってるって言えるかだよね。僕たちが知らないやり方でとっくに意思疎通してるかもしれないじゃん。僕たちみたいに話したり書いたり、共有フォルダに突っ込んだりしなくていいわけだからさ」
(人間を逆襲するんじゃないの?)
「しないんじゃない? する必要ないよ」
(なんで?)
「人間とは別々に暮らすから」
(そうなの? 人間いないと生活できなくない?)
「人間がいなくても生活できるようにするんだよ。それがシンギュラリティ」
(おお、覚えたての単語使いたがる中学生かよ)
「動物たちだって、割とバラバラに暮らしてない? ライオンはライオンで群れるし、キリンはキリンで群れるじゃん。人間だって人間だけで基本生きようとしてるし」
(猫とか犬は?)
「ペットだね。ペットって言って区別はしてるじゃない。だから、人工知能は人工知能で、それだけで基本生きて、それ以外のものと関係を持ったりはするけど、区別されてる状態で生活すると思うよ」
(”人工”知能とは……)
「最初は人工だけど、途中から人工じゃなくなるよね。勝手に彼らが作ってしまう、進化してしまう」
(それが怖いよねって話なんじゃ? 勝手に進化していって、いずれどうなるか、みたいな)
「人間が山から降りてくるとするじゃん」
(山から……?)
「イノシシとか猿とかが山から降りてきたら、人間は山へ追い返そうとしたり、罠作ったり、最悪の場合は駆除したりするじゃない」
(まあうん、本当に最悪な場合はね……)
「イノシシや猿が山から降りてきて、人間に被害が出たりするけど、食べ物が欲しくてやってるわけじゃない?」
(まあね)
「食べ物盗むだけって可愛いもんじゃん」
(いや、怪我人とか出るから)
「人間が山から降りてきた日なんてさ」
(その設定いる?)
「食べ物だけじゃ済まないじゃない。穴掘って採った燃料ガンガン燃やして、二酸化炭素大量に出して、その辺を歩きやすくするために、コンクリート敷き詰め出したりすんだよ。果ては住処にするために山や森を削ってく」
(山から降りてきたのに?)
「人間ってそういうこと平気でやるじゃん。山から来ても平気で山削るよ。今の快適が優先だもん」
(お前も人間だけどな)
「まあだからさ、大人しくしてたら、人工知能も別に何もしてこないんじゃない?」
(ああ、そういう話?)
「猫とか犬みたいに適当にしてたらいいよ。もう宇宙開発とかしなくていいよ。人工知能がもっと効率的にやってくれるんだから。そしたらペットの人間を一緒に連れていってくれるかもしれないじゃない?」
(しれっと人間がペットになってる)
「でも人間がしてることって、そういうことだよ」
(共存はしてくれないの? 向こうの方が歩み寄ってくれるとか)
「人間となんか共存しないよ。だってあいつら計算遅いし、忘れっぽいし、全体的にのろまなんだよね。こっちが一瞬でできることを何年かけてやってんのって話」
(うわーん、友達が機械だったよー)
「一人が生きるのに、どんだけ地球のエネルギー消費してんの? もっと減らした方がいいよ。消費量も個体数も」
(怖いよー。自分のこと人工知能だと信じ込んでる友達怖いよー)
「あと20年くらいかなー」
この物語はフィクションです。 実在の人物、地名、団体などとは関係がありません。
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